shuntaro yoshino

前田春日美+吉野俊太郎 「Allocentric Room」

“Allocentric Room”(「他人本位の部屋」)

2020

Installation

瑞雲庵 Zuiunan, Kyoto.


美術家・前田春日美との共同制作作品。彫刻家の黒田大スケによる企画展「本のキリヌキ」(瑞雲庵、京都)にて発表。


→展覧会風景を3DVR映像にてご覧いただけます


「他人本位の部屋」。日頃の自身の身体にある種の不全感を感じ取る経験から制作を続ける前田と、彫刻の操演性について考察を巡らし、美術展示における台座をヒントにした制作を行う吉野が共同制作するインスタレーション作品である。なだらかな斜面を持った台座状作品《Atopic Couch》と、展示空間をゆっくりと往復するディスプレイを伴う《Annoying TV》、他複数のオブジェクトから構成される本作は、〈身体〉とその様態を起点として、二つの視点の交差点で制作された。


前田は「唯一存在を確信できるもの」として、自身の身体をこれまで自作の中で扱ってきた。その中で身体は常に統御しきれない対象、つまり自意識とは距離のある物として捉えられ、確かに客体化された状態で描写される。一方吉野は彫刻というメディアを検討する先で、「操演されるもの」としての彫刻物とその身体を仮定しようとする。吉野にとって、作品らは常にヒエラルキーと力によって統御される側の存在であり、台座とはそれを可視化しつつ象徴する表象である。人物と彫刻物、それら二つの身体への眼差しを混交させて制作された本作では、空間内に立ち入る鑑賞者の身体すらも、その両方に位置する可能性のある不安定な存在として作品に関係していくことになる。


なお、以後に掲載するテクストは全て、会場にて配布した資料に掲載の作品説明文と同一のもの。


《Allcentric Room》は本作の総称であり、インスタレーション全体を指し示すタイトルとして設定した。展示されている3枚の写真は、台座を携えて都内のスタジオで撮影したものである。支柱を基点に、立っている様子、横になっている様子、その中間の様子の3種類を撮ろうと決めて撮影に臨んだが、想像していた以上にポージングは過酷なものとなり、自らモデルとなった前田は自身の身体の形を維持するので精一杯、自動的に吉野はその前田の身体の位置や手足の角度を調整する係となる。辛いポーズは短時間の撮影しか許さず、よって慌ただしい動きを伴った撮影となり、サポートのため同行した人物からはのちに「まるで塑造をしているようにみえた」と指摘されることとなった。

前田春日美+吉野俊太郎 「Allocentric Room」

前田春日美+吉野俊太郎 「Allocentric Room」

前田春日美+吉野俊太郎 「Allocentric Room」

前田春日美+吉野俊太郎 「Allocentric Room」


前田春日美+吉野俊太郎 「Atopic Couch」

“Atopic Couch”

2020

Sculpture, with built in speaker.


この四角い形態は、台座で間違いはない。元は前田が乗るための台を作るところからだったが、《Annoying TV》内で表示する映像プランの中にあった「土を掘る」イメージを実装する中で、いつの間にか「掘る」は「掻く」へと姿を変え、前田の身体は台座の上に留まらず、内部へも入り込むことになった。刺さっている支柱も当初は遊具のイメージで制作されたものであったが、手すりや杖、剣に竹筒など、のちに複数のイメージを抱え込むこととなり、最終的にはスピーカーの役割も果たすこととなる。こうなるとこの形態がただの台座であるかどうかは既に怪しく、家とか、着ぐるみとか寝台、さらには棺桶にも似たものに感じている。


前田春日美+吉野俊太郎 「Annoying TV」

“Annoying TV”

2020

Sculpture include videowork


作品プランがまだ決まりきらないある日、ふと「お化け屋敷みたいな状況をつくりたい」という提案があった。映像を観る者の、実在の身体と映像内での出来事との予期せぬ瞬間的な同期に注目した前田からのこの提案は「ディスプレイを動かす」という単純明快な作品動作へと結実した。もともとはディスプレイを動かすことだけを考えていたものの、どうしても導入せざるを得ない運動装置自体をどう作品に組み込んでいくかを検討していた際に、自然と登場したのが吉野の用いる台座であった。映像内には字幕を表示し、それらを鑑賞者へのノックとするが、ほんの少しの「迷惑」を追加するためにフリップを採用。そしてフリップを掲げる手は、台座と同じ白が選ばれた。

前田春日美+吉野俊太郎 「Annoying TV」


前田春日美+吉野俊太郎 「Mannequin」

“Mannequin”

2020

Photograph


この展示に参加することになってしばらく後、急遽7月にも2人揃って別の展覧会に出展することが決まった。その時点で既に「本のキリヌキ」では共同制作をすることを決めていたため、この7月の展覧会でも共同制作を試みることにした。その際、映像撮影に使用する小道具を作るためにふと撮影した手の写真がとても奇妙に仕上がり、2人とも少しの間、その画像から目が離せなくなったのを記憶している。拘束した手を撮影しただけであるのに、光の都合なのか、それはあまりにも生気がなく、構造も一目ではわかりづらいために、手には見えず、鮮度の悪い肉塊のようだった。その時のイメージを再制作したものである。


会場:瑞雲庵(京都府京都市北区上賀茂南大路町62-1)

装置制作:中路景暁

作品内写真・映像撮影:コムラマイ

支柱制作:細井えみか、李旭

協力:亀元円、大石一貴、黒田大スケ


Venue:Zuiunan(62-1, Minami-Ojimachi, Kamigamo, Kitaku, Kyoto-city, KYOTO)

Mechanic:Hiroaki NAKAJI

Camera:comuramai

Prop making:Emika HOSOI, Asahi LEE

Special Thanks:Tsubura KAMEMOTO, Kazuki OISHI, Daisuke KURODA